ぼーの の日記

セイバーメトリクスとか

NPB版xBABIP式の構築

BABIP(Batting Average Balls In Play)とは本塁打を除くインプレー打球に対する安打の割合を示す指標であり、運に大きく左右されやすい数値として知られている。1)

近年、この運の要素を可能な限り排除した指標の開発が活発化しており、その代表的なものがxBABIP (expected BABIP) である。2), 3), 4) xBABIPは直訳すれば"期待BABIP"と訳され、安打に内在する要素(打球の質や打者の走力)を使ってBABIPを導くことでノイズを抑え、真のBABIPを推定することを目指している。

xBABIPに関する研究はアメリカが先行的に行っており、MLBのデータがベースとなっているため、現存するxBABIP計算式はNPBにそのまま適用できない。本記事では、NPBに対応したxBABIP式の構築を試みた。

先行研究にならい、安打に内在する要素として使用するデータはDELTA社が公開しているBatted balls、Plate discipline、Speed score (Spd)とする。

まずBABIPと相関関係の強い指標を探る。観察対象は2014〜2017年の規定打席到達者 (サンプル数 220) とし、相関関係の強さは相関係数により評価する。Table. 1にBABIPと各指標との相関係数を示す。

Table. 1 BABIPと各指標の相関係数

BABIPと最も強い正の相関を示したのがライナー率(LD%)で、最も強い負の相関を示したのが内野フライ率(IFFB%)である。これは、ライナー性の打球が最も(運に左右されずに)安打になりやすく、内野フライが最も安打になりにくい打撃イベントであることを示しており、直感的にも納得がいく結果となっている。次に強い相関を示したのがスピ−ドスコア(Spd)とハードコンタクト率(Hard%)であり、これらはMLBよりも高い相関を示した。今回、相関の有無のボーダーラインを相関係数の絶対値0.2以上とし、それ以下はBABIPと関係性の薄い指標として除外する。

次に年度間相関(Year to Year correlation)の強いものを探り、さらに絞り込む。年度間相関とはその名の通り、ある選手のある年Y1とある年Y2における指標の相関をみることで、指標の再現性の高さを表す数値である。高い年度間相関をもつ指標ほど、毎シーズンの指標の再現性が高く、より真の実力を表した指標として判断することができる。観察対象は2014〜2017年の規定打席到達者のうち2シーズン以上規定打席に到達した選手(サンプル数 180)とする。Table. 2に各指標の年度間相関の調査結果を示す。

Table. 2 各指標の年度間相関

最も年度間相関が低かったのがLD%で、ライナー性の打球は打者の技術では制御できないことを示唆している。また、センター方向飛球率(Cent%)も低い値を示した。一方で、Spdや引っ張り率(Pull%)は非常に高い年度間相関を示し、いわゆる俊足バッターやプルヒッターの存在を示している。Table. 2に示す指標のうちLD%とCent%はランダム性の高い打撃イベントとして切捨てる。GB%とtureFB%は対の関係にあるため今回はtrueFB%を採用する。また、Soft%、Pull%、Opps%はtureFB%と強い相関を示したので、採用を見送った。
以上より、最終的なxBABIPの式は以下の通りとした。

最後にこれらの定数の決定を行う。今回は、2014〜2017年の規定打席到達者のうち3シーズン以上規定打席に到達した選手(サンプル数 37)を対象として3〜4シーズンの各指標の平均値を算出し、フィッティングを行った。Fig. 1にフィッティングの結果を示す。


              Fig. 1 フィッティング

このフィッティングにより得られた式は以下の通り。

最後にxBABIPから計算した2017年の規定到達打者のluckランキングを示す。
ここでluckとはBABIPとxBABIPとの差を表し、幸運の度合いを示す。また、xAVGはxBABIPから求まる打率である。

広島の安部は昨年サードのレギュラーに定着し、初の規定打席到達&3割超えを果たしたが、運の要素も大きかった模様。このままいけば、来季は打率が.270程度まで降下することが予測される。また、巨人のマギーも昨年好成績を残したが、来シーズンは成績を落とす可能性がある。ヤクルトの山田は昨年極度の不振に陥ったが、一部不運が絡んでいたことが考えられる。しかし、xBABIPも例年より低く、選手自体のパフォーマンスも低下していたと推測される。
パリーグでは、日ハムの松本、ソフトバンクの上林がブレイクしたが、打率に関しては運に助けられた部分も多かったようだ。しかしながら、まだまだ発展途上の選手であり来期以降の成長に期待したい。ロッテの角中は昨シーズン低打率に終わったが、これは不運による低迷であり、能力自体の衰えはそれほど大きくないと思われる。楽天の島内は2016年から順当に成績を伸ばしている選手であるが、ポテンシャル的には来シーズン以降もさらなる飛躍が期待できる。

<おまけ>
真の首位打者は誰だ?xAVGランキング

xBABIPでも首位打者は変わらなかったとさ。。。。

Reference
1) http://www.baseball-lab.jp/column/entry/175/
2) https://www.fangraphs.com/plus/developing-the-bestest-xbabip-equation-yet/
3) https://www.fangraphs.com/fantasy/new-hitter-xbabip-based-on-bis-batted-ball-data/
4) https://www.fangraphs.com/fantasy/gettin-shifty-with-it-introducing-the-new-xbabip/