ぼーの の日記

セイバーメトリクスとか

Bリーグにおけるリプレイスメント・レベル

リプレイスメント・レベル(Replacement level)とは、"容易に用意できる控え選手の成績レベル"のことを指す。選手の勝利貢献度を推定するうえで非常に重要な概念であり、セイバーメトリクスを中心に活発に研究されてきた。*1

今回、バスケットボールにおけるリプレイスメント・レベルについて、Bリーグのデータを用いて調査を行った。

【レギュラー選手とリプレイスメント・レベル選手の切り分け】

レギュラー選手とリプレイスメント・レベル選手を切り分ける方法について、セイバーメトリクスの過去の研究よりわかっている ”リプレイスメント・レベルに相当する選手は試合出場機会のおおよそ20%を占める” という考え方を適用する。

まず各チームにて、選手を出場時間の多い順に並べ、上から順に選手を除外していき、除いた選手の合計出場時間がチーム総出場時間の80%を超えるまで繰り返し、残った選手をリプレイスメント・レベルとする。

この方法で選手を切り分けると、リプレイスメント・レベルの選手が各チームに約5.5人、レギュラー格が約7.5人という計算になり、感覚的にもそれほど的外れな数字ではない結果となった。

 

リプレイスメント・レベルの選手能力と勝率】

続いて選手能力の比較を行う。

今回、選手能力を表す指標として、1分あたりの得点(得点/min)を用いた。比較の結果をTable.1に示す。

Table.1 得点/minの比較

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 得点/minのリーグ全体平均は0.382であったが、レギュラー格とそれ以外の選手に分けると、それぞれ0.395、0.328という結果となった。よって、Bリーグにおけるリプレイスメント・レベルの選手はリーグの平均的な選手と比べ、0.86倍の得点力を持っていると推定できる。NPBではおよそ0.88倍であることが知られており、近しい結果となっている。

ここでリプレイスメント・レベルの勝率をピタゴラス勝率により推算してみる。リーグの平均的なチームのシーズン総得点はおよそ4600点なので、リプレイスメント・レベルの選手だけで組んだチームのシーズン総得点は 4600×0.86=3956点 と推定できる。リプレイスメント・レベルのシーズン総失点は、バスケの守備についてあまり詳しいことがわからないので、ここでは 4600×1/0.86=5348点 と仮定する。これらの値を前回記事で構築したピタゴラス勝率の計算式に当てはめると勝率は .045 となる。

野球におけるリプレイスメント・レベルの勝率は.300程度と言われているが、バスケではわずか.050程度である。選手の得点能力の比較ではバスケが0.86倍、野球が0.88倍と、選手能力格差はほとんど変わらないが、勝率に変換すると大きな違いが現れている。

 

バスケットボールは選手能力の優劣が勝利に顕著に表れやすいスポーツである。能力の劣る選手は高確率で敗北し、下剋上(ランダム性)が少ない。(裏を返せば、野球は選手の優劣が勝利に現れにくく、ランダム性が高いスポーツともいえるが…)このような特性は得点スケールの大きさが大きく関係している。これについては、また機会があれば。

*1:基本概念についてはこちらでわかりやすく解説されています。