ぼーの の日記

セイバーメトリクスとか

アシストによる得点貢献の定量化

アシスト(Assist, AS)とは、得点に直結するようなパスを出したプレイヤーに与えられる記録項目である。スタッツとしては広く知られているが、どの程度得点に貢献しているのか感覚的に掴みにくい側面がある。今回、統計分析によりアシストの得点貢献の定量化について検討した。

 

【ポテンシャルアシスト(Potential Assist, PotAS)について

まず、ポテンシャルアシスト(以下、PotAS)の概念について説明する。スタッツとして一般的に用いられるASは、パスを受けた選手がシュートを成功させて初めて記録される。シュートが失敗した場合のパスプレーはASとして記録上残らないため、AS数はシューターの能力に大きく左右されてしまう。この偏りをなくすため編み出されたのがPotASである。PotASはASだけでなく、シュートが失敗した際のパスプレーもカウントしており、前述のバイアスが解消されている。

残念ながら、PotASの厳密な集計は映像解析を必要とするため個人での計測はほぼ不可能である。今回は、”PotASがASにつながる確率は選手によらず一定である”という仮定を置き、AS数からPotAS数を推定している。NBAの統計データ*1から、PotASがASにつながる確率は50%程度であることが知られており、ASに潜在的に存在しているPotASの数はAS数の約2倍であると推計できる。

PotASの得点価値は、PotASを受けたときのシュート確率とPotASなしのときのシュート確率を比較することで計算することができる。こちらも残念ながら個人での算出は不可能なため、過去の分析結果を参照する。NBAの分析では、得点価値は約0.16点であることがわかっている。*2

 

 【PotAS得点の定量化】

PotAS得点(PotAS Score)の計算式は以下の通りとした。

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上の式はリーグの平均的な選手と比べ、PotASによりどれだけ得点を獲得したかを表現している。lgPOSSを5倍しているのは、チームの1POSSにつき5人の選手にパーソナルPOSSがそれぞれ与えられるため、そのスケール調整である。パーソナルPOSSの集計が難しい場合は、teamPOSS×出場時間割合で代用するとよい。

 2017年Bリーグにおける各選手のPotAS Scoreを計算した結果をTable.1に示す。

Table.1 2017年のPotAS Scoreランキング

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※本データはPlaybyPlay速報から独自に集計したものなので、公式記録と若干のズレがあります。

トップの並里選手は約90点をPotASだけで獲得しており、勝利にして約3勝分の働きを見せている。アシスト効率AS/PPOSS%が 群を抜いており、限られたPOSSのなかアシストを量産している。

 

 【パスミス損失の定量化】

パスミスによる損失はパスプレーを評価するうえで外せない項目である。

パスミスとはパスの失敗により相手に攻撃権(POSS)を与えてしまう行為のことなので、その得点価値は1POSSあたりの得点期待値と考えればよい。2016-2019年のBリーグにおける1POSSあたりの得点期待値は1.04点なので、パスミスの得点価値は-1.04点とした。今回、パスミス数として被スティール数(STA)を用いた。

パスミス得点(BadPass Score)の計算式は以下の通り。

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上の式はリーグの平均的な選手と比べ、パスミスによりどれだけ得点を損失したかを表している。

2017年Bリーグにおける各選手のBadPass Scoreを計算した結果をTable.2に示す。また、PotAS Scoreと合算し、パスプレーの総合的な得点貢献を表すPass Scoreもあわせて示す。

Table.2 2017年のPass Scoreランキング

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PotAS Scoreトップの並里選手は、パスミスによる損失が大きかったが、それを大きく上回るPotAS Scoにより総合スコアも変わらずトップとなった。三河の橋本選手はアシストこそ控えめだが、ミス少ない確実なパスを積み重ね、総合でTop5に食い込んだ。

 

【最後に】

 今回の計算はあくまで平均的なプレー状況を想定したスコア値である。実際にはそのときのプレー状況によってPotASの得点価値は大きく変化し、瞬時の判断力がスコア値に大きく影響すると思われる。しかし、そのためには映像解析をはじめとした緻密なデータ収集が必要であり、個人の力では困難なのが現状である。