ぼーの の日記

セイバーメトリクスとか

【PbyP解析】遊撃手GG賞 2021 -ファーム編-

今回はファーム遊撃手編です。評価項目は前回同様、「守備範囲」、「併殺奪取」、「失策抑止」です。ノミネート選手は各球団の守備イニングが最も多かった選手です。それではみていきましょう。

守備範囲評価(RngR)

前回同様、「守備責任打球」を集計し、そのアウト獲得率から守備範囲評価を行った。Table.1に遊撃手全体の守備責任打球とアウト獲得率を示す。

アウト獲得率は69.0%で、1軍よりも低い値となっている。1軍と2軍では環境が異なる(打者の打球速度やグラウンドの整備状況など)ため単純な比較はできないが、一定のレベル差があることが確認できる。

Table.1 遊撃手全体のアウト獲得率
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各選手のアウト獲得率と守備範囲得点(RngR)をTable.2に示す。トップは+7.9を記録した高卒ルーキー土田となった。シーズン終盤には1軍の試合にも出場しており、首脳陣も大きな期待を寄せていることがうかがえる。ウ・リーグトップは森の+5.2で、強肩を活かした守備が機能した。こちらもシーズン終盤は1軍でスタメン出場する機会が多くなり、RngR+1.1をマークしている。

Table.2 2021年ファーム遊撃手 守備範囲評価
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併殺奪取評価(DPR)

DPR計算の考え方は前回の記事で解説した。Table.3にファーム全体の併殺成功率を示す。1軍と2軍では値にほぼ差はなかったが、環境の違いがあることに注意したい。

Table.3 遊撃手全体の併殺成功率
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各選手の併殺奪取得点(DPR)をTable.4に示す。トップは森の+1.7。Table.5に「併殺起点」と「併殺中継」に分解した数値を示しているが、併殺中継での得点が高く、強肩を武器に多くの併殺を獲得していたことが見てとれる。

全体をみると併殺起点による得点は -0.6 ~+0.7 の範囲に収まっているのに対し、併殺中継は -2.5 ~ +1.8 と得点格差が大きくなっている。中継プレーの方が要求される技術レベルが高く、格差を生みやすいのかもしれない。

Table.4 2021年ファーム遊撃手 併殺奪取評価
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Table.5 役割別DPR
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失策抑止評価(Err)

遊撃手全体の失策データをTable.6に示す。ファームの失策率は、1軍の2倍近く高い値となっている。この差異について、DELTAの分析*1よれば「2軍遊撃手が1軍でプレーすると失策率が減少する」というデータが出ており、選手能力のレベル差よりもグラウンドの整備状況といった環境的な要因が大きいと思われる。2軍の後逸数が極端に多いのは、イレギュラーしやすいグラウンド環境でプレーした結果なのかもしれない。

Table.6 遊撃手全体の失策率と内訳
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各選手の失策抑止得点をTable.7に示す。カッコ内の数字は失策数を表している。トップの川瀬の失策数はわずか3つで非常に安定感のある守備を見せた。山村はRngR、DPRでは平均的な数字だったが、失策が多く安定性に欠けていた。

Table.7 2021年ファーム遊撃手 失策抑止評価
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総合評価(TZR)

Table.8に総合評価を示す。川瀬は広い守備範囲と少ない失策数を両立し、トップの+8.4を記録した。惜しくも2位だった土田は、Err得点の少なさが結果的に順位に響く形となったが、本拠地であるナゴヤ球場の内野は土グラウンドであり、環境的にやや不利な面もあった。1軍に昇格すれば解消されるだろう。森はRngR、DPRでトップクラスの数値を記録したが、やはり失策の多さが目立っている。特に悪送球が多く、自慢の肩はまだまだ発展途上といえそうだ。

Table.8 2021年ファーム遊撃手 総合評価
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*1:「デルタ・ベースボール・リポート4」、”二軍の守備成績の捉え方”、2021年